両腕を大きく広げ、相手の胴回りでも肩でもを、とにかくひと思いに包み込むこの行為を、ハグという。
愛情表現の一種と知ってはいても、ユーリにとってするのもされるのも馴染みの無いそれ。
相手によっては不快極まりないし、力加減によってはかなり苦しい上に、びっくりもする。にも関わらず、それを許している人物がいた。
最初に会った、否、こちらが一方的に見かけたのは、
アッシュが旅先で2、3度会ったことのある男がメンズファッション誌に載っていると言って喜びと驚きで目を丸くして報告してきた時。
その時、次のパーティに招待されているらしいと聞き、
だから、二度目に見かけたのはポップンパーティの会場だった。
そう、こうして、最初はアッシュに会いにきたところに居合わせて、紹介されたのだった。
その後も元の知り合いであるアッシュを介して会うことがほとんどで。
スタジオですれ違えばあいさつと共に一言二言交わす程の仲にはなった。
放浪癖のあるという彼が、一等好きなグラデーションを求めてねぐらに帰ろうとしていた吸血鬼に遭遇するという偶然も起こり。
仲の良さで言えば、向こうはどうだか知らないが(寧ろ人類皆家族とか思っていそうだが)、
ユーリにとっては知り合いから友人のちょうど真ん中くらいに位置していた。
にも関わらずそれをもう5回か6回は許してしまっていた。その油断の理由も、本人には判ってしまっていて。
比べても違うところは多々あって、そもそも向こうの方が大口を開けてよく笑うし、
誰彼構わず愛情表現するような人懐っこい質であるし、間延びした声に、気に障らないタメ語、
本職でさぞ重宝されているであろう長い手足をぷらぷらさせ、何処か悟ったような落ち着きを纏って、
年齢は聞いたことがないので知らないが、キラキラしていて少年のように純粋な瞳は決定的な違いを表していた。それでも。
それでも、褐色の肌に獣耳、帽子で隠れる表情と、見上げる長身。
何より、夜の時間の繊細な空気と、朝日を浴びて気持ち良さそうに笑うその表情が。
吸血鬼が彼の愛情表現を容赦なく切り捨てるのに、未だ暫らくのあいだ、一瞬の躊躇を与えるのだろう。少しだけ。
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ブラウン兄さんとユーリ。たまにはスマイル以外の第三者を当て馬にしてアスユリを。
グラデーションLONG聴きながら書き殴りました。
FEVERの中では結構お気に入りキャラなんですが、EXができなくなっちゃってから遠のき中。
アッシュはブラウンの広い愛を知ってるから嫉妬しないよ多分。
でも心の隅ーの方で、ユーリにまで抱きつくのはやめて欲しいなぁとか思ってりゃいいさ!
061122
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