こちら↓はよもぎ様のサイト「HIDE AWAY」の2008/9/3〜のTop絵です。




 タタン…タタン…、と一定のリズムを刻み続ける電車の音を聴きながら、アッシュはそのリズムが昔叩いたどの曲に似ているかということを考えていた。 かれこれもう20分にもなる。 座ってすぐ寝息を立て始めた隣の人は、最初の駅に着いた時、慣性に逆らえずずり落ちそうになった身体を寄せてからは、ずっと健やかに眠り続けている。
 仕方ないか…眠るのはユーリの趣味みたいなもんだし。

 駅と駅の間隔が妙に広いこの路線に、乗ったのはアッシュも初めてのことだった。 以前バイク好きの友人が景色が良いと薦めてくれていたが、そういえばそもそもバイクが好きな彼がどうして電車を使ったのだろうかと、一人可笑しく思った。 電車は相変わらず一定のリズムを刻み続けている。

 車内に乗客はまばらだ。平日の昼間という中途半端なこの時間の所為なのか、元からそういう電車なのかはアッシュの知る由もないところだったが、 ユーリの眠りを妨げる余計な騒音が無いのは喜ばしいことだった。 1列向こうで座席の端にポツンと腰掛けている老婆も、初秋の日差しの中こっくりこっくり居眠りをしていた。

「ユーリ、重いッスよ。ちょっとずれて……。」
 また、電車が停車した反動でユーリの身体がアッシュの鎖骨あたりまで傾いだので、彼にだけ聞こえる声で囁いた。
「ン……。」
軽く応えて頭をアッシュの肩の元の位置に戻すと、ユーリは再び眠りについた。アッシュは窓の外を眺める。
 いつの間にか、眼下に海が広がっていた。 山の中腹をなぞる様に線路が引かれているこの路線では、暫くこの景色が続くのだそうだ。アッシュは海を眺め続けた。眩しい。

 錆の匂い。潮の匂い。視界を覆う淡く広い日差し。左肩の確かな重みと、ぬくもり。電車は一定のリズムを刻み続けた。

 ふと、次の駅が終点だと告げるアナウンスが流れる。 アッシュは肩を振り返り、未だ静かな寝息をたてている彼のさらりとした頭髪に鼻をうずめるようにして、一度だけ深く目を閉じた。 終点ですって、心の中で祈るように呟いた。









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で、なんで私ごとき者がこの妄想かきたてられる素敵絵を飾らせて頂いてるかと言いますと、
この絵から紡ぎだした妄想を裏日記に勝手に書いたのがよもさまご本人のお目に留まり、
メッセで話す内に(中略)掲載の許可をもぎ取った次第に御座います。

SSはあくまでオマケ的な存在であってよもぎ様のイラストをご堪能下さればこれ幸い。
イメージ壊された方、申し訳ありません…orzあなたの脳内の妄想を是非大切にして下さい。

こういう、ストーリーが浮かんでくる一枚絵って素晴らしいと思いませんか!
特に電車!そしてアッシュの表情が絶妙!目に見えないはずの夏→秋の空気を描いてらっしゃるところが凄い。

あ、タイトルはよもさまが絵につけていたものを拝借しました。元ネタは大滝詠一氏ですよね。
よもぎ様、素敵な絵をありがとうございました!
08.09.28


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