※かなりイロモノな上、アスユリなのかよく判りません。 何か絵本みたいなハロウィンネタです。それでもイイ!という方だけどうぞ。 かぼちゃはいつもどれを見ても大きく感じるけれど、それはアッシュが今まで見た中で一番大きいかぼちゃでした。 緑色であるはずの外側の皮は、ハロウィーン祭り用に派手なオレンジ色をしていましたが、 アッシュはそれが、元からそういう色になるように育てられたかぼちゃだと知っていましたから、 気味が悪いなどと思ったりはしません。 そのごつごつしたオレンジ色の前に立って、アッシュは耳を出来るだけかぼちゃに近付けます。 アッシュの耳は他の人よりとんがっていて、どんな小さな音でも拾うことができるのでした。アッシュは耳をすましました。 聞こえます。確かにユーリの声でした。 まぁ、こんな大きなかぼちゃの中、ユーリは一体どうやって入ったのでしょう。 とにかく、スマイルの言っていたことは間違ってなかったようです。アッシュは心を決めました。 「ユーリ!今助けるッスから、あんまり中のかぼちゃを食べちゃ駄目ッスよぉ。」 あらんかぎりの声で叫びます。だってそうしないと、中のユーリには届きませんものね。 キィ、と小さくユーリの声が聞こえた気がしました。 さて、アッシュは持って来た銀のスプーンをよいしょと、持ち上げました。 最初は重さにふらつきましたが力を込めて支えると、スプーンを斜めにしてかぼちゃに立てかけます。 かぼちゃの皮の上の方にはジャック・オ・ランターンの鼻の部分にあたる三角の穴が空いていましたから、 そこを目指してアッシュはスプーンを立てかけて、銀色の冷たい道を登って行きました。 固い皮に手をかけて、三角の穴の縁に立った時、これは凄い高さッスよ、と思って後ろを見るのが恐かったけれど、 スプーンがこれからも必要だと思い、下を見ないようにしてふりかえって、うんしょ、うんしょ、とスプーンを引き寄せました。 スプーンは、柄の端っこまで引き寄せると急に軽くなって、アッシュはバランスを崩して後ろ向きに倒れてしまいました。 さあ、大変!そのまま三角の穴からかぼちゃの中へ、真っ逆さまに落ちていきます。 落ちても痛くありませんように、とアッシュはぎゅっと目をつぶりました。 アッシュの願いはちゃんと神様に通じたようで、アッシュはかぼちゃの種たちの、 やわらかいベッドにふんわり受け止められました。 気がついたアッシュは種を潰してしまわないように急いで立ち上がると、スプーンを持ってあたりを見渡します。 造りかけのかぼちゃのランタンの中はとても奇妙でした。 かぼちゃの実は固いところと柔らかいところがあって、アッシュはつまづきそうでした。 アッシュが一歩踏む度に、かぼちゃの床はいじわるするようにちょっと沈んで、 アッシュが足を離そうとすると、せんいの糸がからまって邪魔しました。 まだ充分に掘られていないかぼちゃの壁は、斜めになっていたりギザギザしていたり行き止まりだったり、 まるで黄色い迷路のようです。 アッシュはユーリのキィキィという小さな声を頼りに、 かぼちゃのかたまりを乗り越えたり、壁にスプーンで穴を空けたりして進みました。 芯のところはとても固く、アッシュはスプーンを上から下に何度もえいや、と振り下ろしたので、腕がすっかり疲れてしまいました。 それでもこうして、かぼちゃに混じってユーリの匂いが近付くので、 アッシュは嬉しくなって耳をパタパタさせながら、最後のかぼちゃの壁を掘って崩しました。 するとどうでしょう。 さっきまで壁の向こうできぃきぃ言っていたユーリは、待ちくたびれて眠っていました。 お腹はぷくんとふくらんで、口の周りには食べこぼしたかぼちゃがいくつかついています。 ほっぺたをぷにぷにつついても、ユーリはぷすぷすーと気持ち良さそうに寝ているので、アッシュは怒る気が失せてしまいました。 仕方なく、ユーリが起きたらちゃんとかぼちゃから出られるように、 ユーリが落っこちてしまったかぼちゃの上の穴に向けて階段を掘って待ちました。 でもアッシュは最後の段の形を整えている時に気付いたのです、 ユーリにはそういえば、小さいけどちゃんと羽ばたける、赤い羽根がついているってことを。 05.10.19 |