提灯の灯かりは橙色というより赤に近く、見上げた空の紺色と交じった紫色が、蒸せる程の熱気を吸い込んでいく。
先ほど互いを見失った一瞬の後、もう逸れぬようにと繋いだ手と手もじんわりと汗が浮かんで、
今や目の前に迫った熱い鉄板の屋台の前、自然な流れでほどかれる。 あー熱い。ねぇ何か飲み物も買おうよ。俺コーラ。了解。端にポツリと立つ自動販売機は、異質な無色の光を放つ。 数人の列に並んで、赤い缶をひとつ買う。 外気に触れるとすぐに汗をかいて妙にツルツル滑るそれを取り出し口から掴み上げて振り返ると、 鼻先に、怪物を思わせる生物の焼け焦げた姿。 わ、びっくりした。お前ぇ一本しか買わないで間接チューしようとしてるだろ。 ぁあ、バレた?わからいでか、貧乏人。ヘヘヘ、いいじゃない。 笑いながらKの手を占領している自分の分の焼きイカを、早く受け取って手をまた絡ませてやろうと思ったけれど、 コーラとそれに阻まれては流石に無理だと悟って無意味な嫉妬心を見出してしまった。 畜生、あの手には醤油づけの軟体動物だかのなれの果てや砂糖づけの黒い液体が入っている缶よりは、 俺の右手の方がふさわしいだろうと、無駄に急いでがっついていたら、そんなに腹減ってたのかよと見当違いな笑い声。 まぁ、どんなに人混みの熱にあてられようと、結局はこうして、美味しく食べて飲んでしまうんだけども。 笑い声を聞きながら罪無きコーラとイカに心の中でご馳走様と、呟いた。 ************************************ 祭り好きです。KKに焼きイカ。マコトに焼きモチ。お粗末。 05.07.09 Textに戻る |