※Kマコですがちょいといつもと毛色が違う。ので要注意。




 銀杏並木の青いベンチに、見慣れた作業着とライトブラウンの髪をようやく見つけて、マコトはバイクを降りた。 ヒラヒラと、ドラマみたいに黄色い銀杏が絶え間なく降っている、それは深い秋の夕暮れ。
「K。」
「マコト…。」
 呼んだ静かな声に、組んだ手に隠すようにもたれていた顔があがる。驚きと安堵と情けなさが混じり合った不安そうな表情。
「どしたのさ…。」
 秋の風が通り過ぎる。この寒さの中でもKKはつなぎの上に何も着ていない。
「何で…お前、」
「おじーちゃんから聞いた。ついでに捜してくれって頼まれた。仕事サボッたって、」
「あ、ああ…。」
もうそんな時間か、小さい声が風に紛れた。 今を最も深いところとする秋は終るところを忘れたかのようだった。




「子供、殺した。……撃ったんだ、この手で、」
 KKがそう言えたのはようやく、マコトが近くの自販機で熱そうな缶コーヒーを買った頃、しかも、それっぽっち。
 俺がもっと気をつけていれば、撃たなくて済んだのに助けてやれたのに。 まだ、凄く小さくて、この前MZDの奴が連れてた小っさいの、あいつくらい。 予期せぬ死者が出ることはしょっちゅうだけどこんな後味悪ぃのは久しぶりで、 一瞬で死体になった子供を見て、あ、ヤベェなぁと思った通り、 明け方の銀杏並木の綺麗なこのベンチに腰かけたら立ち上がることできなくなった。
 と、いうことをKKは言えなくて沈黙の中に押し込んだ。いつも通りの顔、声色、態度。 その中途半端な姿勢が、マコトの胸をチリリと焼く。その熱さの正体は苛立ちだった。
 お見通しなんて出来なくて、マコトはもちろんKKの考えていること感じていることはよく判らないしましてや、代わることなど。 なので結局、胸を焼く痛みにも似た熱に身を委ねるしかできない。
「……それが何だ。」
秋風の冷たさに震えたのか感情に震えたのか、低い声が思いもかけぬ響きを持ってしまいそうで、 そのことにもマコトは苛々としながらもう、少しでも零してしまったからには最後まで言うしかなかった。
「何やってんのさこんな寒い所でそんな薄着しちゃって、アンタ一晩中そうしてた訳!?風邪でもひいたらどーすんのさっ!」
 胸ぐらを掴むと呆気に取られたKKの顔を引き寄せる。
「何ヘコタレてんだコラ、アンタはMr.KKだろ!しっかりしろよ…っ心配しただろ馬鹿!おじーちゃんだって、 ……アンタが、アンタがそんなんしてたら……あぶないじゃんか、狙われたりしたら……!…、の、馬鹿K!しゃんとしろ!」
 自分でも滅茶苦茶な言い分だとは判っていたが、叱咤以外に何を言えばいいかなんて、誰が判るだろう。
「ホラ、」
そう言ってマコトはまだ温かいコーヒーをKKに押し付ける。
「とにかく飲んで、そのゾンビみたいな身体、何とかして。」
コーヒーの缶をぼんやり見つめるKKを後目に、マコトはくるりと向きを変え、それはそれ以上見つめていられなかったからに他ならないが、 背中越しに手を差し出して今にも歩き出しそうなポーズ。 ほら行くよ、その背中の男らしいことと言ったら。まだ呆気に取られているKKに焦れても、マコトは決して振り返らない。
「帰るの、帰んないの、」

 決して振り返らない、前だけを見ているその手を取る。 いつだってお前は変わらずに俺の側にいてくれて、 それどころかこのクソ重たいケツを蹴って引っ張り上げて、大切なこと、思い出させてくれる。その上で。
「お前が泣くこたねーだろ。」
そうやって泣くんだ、俺の代わりに。俺の分まで。
 ボロボロと流れる涙はとめどなくてロクに前など見えていないだろうし、 いい年の野郎が手を引かれてこんな往来でこんな状態で、目立つことこの上なかったけれど。
 この、繋いだ手の温もりを、忘れずにいたいと思った。


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Web拍手に「BUMP OF CHICKENの「ベンチとコーヒー」でイラスト描いて下さい。」とのリクエストがあったので、
CD借りてきて聴いてたらあら不思議SSに。
てか、なんであの曲でこれが出来るのか…勘違いも甚だしいですか…。相変わらず自分勝手なサイトですみませ…;
リクエストして下さった方ごめんなさい、イラストは無理でした…。素敵な曲を教えて下さってありがとうございます!
あのアルバム、全体的にKマコに聴こえるんですが(耳腐ってるー)。

んで、下記日付で裏日記の方にアップしていたのですが、
小学生が相次いで殺害される事件が続いていたもので、流石にタイミング悪すぎ…、ということであっちのは消しました。
恐いよー。

あ、この前MZDが連れてたちっさいのてのはセシルのことらしいですよ。
妄想が止まらなくて困るんですが最近。何コレ病気?

05.12.01.

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