短い冬休みが終わり15日ではなく2週目の月曜とかいう決まりになった成人の日が過ぎると、
1月もいつのまにか残り半分程になっていた。空気は砂漠並に乾燥し寒さに拍車をかけ、
町のあちこちで参考書や単語帳を手に切羽詰まった顔をした学生を見かけるようになった。
自分達の後ろの席で分厚い赤い本を広げているのは高校生だろうか、
平日のこの時間ということを考えると予備校生かもしれない、マコトはそんな風に考えていた。
「おぃ、聞いてんのか?」
元旦から今まで音信不通だったことの理由を述べ終えると、
KKはテーブルの中央に鎮座している真新しい携帯電話、自局番号も表示されない代わりに色々とここでは言えないような機能の付いた、
の横に、白い紙片を添えた。綴られているのは、
「んで、これが俺の新しい番号と、アドレス。」
「なんでドコモ!?」
「そこかよ……ジジイがキノコ好きでな。」
「ドコモじゃ絵文字が使えないじゃん!まったく…」
「いい歳したヤローが絵文字満載のメール送ってくんなっての。」
会話している間にもマコトの指は忙しなく動いていた。
ほどなくしてテーブルの上でおとなしくしていた携帯が、独特の音をたてて振動する。
一度目は長く、二度目は短く震えると、着信と受信を告げる表示が両方出た。
「早ぇな。さすがカリスマの指テク。」
「……へえ、」
「あ?」
「とりあえず本当みたいだね、コレ。」
と、言ってつまみあげたメモと着信を受けたKKの携帯を見比べるマコト。
「〜〜〜っ!おい、そんなに信用ねえのか俺は?!」
思わず前のめりになってつっこむKKを見て、マコトはケラケラ笑った。
「まぁね〜だってアンタ前科あるし。」
「っぐ、………チッ…。」
舌打ちをひとつして、マコトの手からひったくるように紙片を奪う。
用が終われば余計な漏洩の種は燃やすだけだ。灰皿の上でライターに火を点けられ、煙もほとんど上げずに消えていく。
「燃やしちゃうの?」
「そーいう約束だからな。」
「おじーちゃんと?」
「あぁ。あのジジイ、俺の行動が目に余るとかぬかしやがった。」
「良かったじゃん、守って貰えて。」
「冗談じゃねえっての!」
「どんな上司も、部下のためになることしか考えてないよ。KKも会社員なんだよねぇー。」
「他人事だと思いやがって。今度壊したらクビだなきっと、」
「そんなに恐いの、おじーちゃん?」
「恐ぇのなんの。もーホント、死んだ方がマシ。部下の命と壊れた携帯、どっちが大事だっつの…。」
「まー俺はおじーちゃんの味方だからなー。」
「……帰る。」
「あ、真面目ー。」
「発信機内蔵してっからこれ以上いるとヤベぇ。何か他にも知らない機能付いてそうだし。いや、ぜってー付いてる。付いてるに決まってる。」
最後の方はぶつぶつと自分に言い聞かせているようなKKを見て、マコトは苦笑する。
この分だと姫初めはまだまだ先のことになりそうだ。業務内容はともかく、思わずお仕事頑張ってと言いたくなった。
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KKさん、Gさんにお灸を据えられ禁欲生活、の巻(笑)。
仕事で無茶して携帯に弾当たって命拾いしたらしいです。
良い機会だということでケーバン替えさせられます。
何とかマコトに教えるのだけは許して貰いました。頑張ったねKK!
ちなみにおじーちゃんはMZDがポップンパーティーに自分をピンで呼んでくれないから、
KKの番号尋ねられても教えてくれません(どうでもいいとこまで妄想)。
070114
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