全く予測無くやって来る「それ」はいつも俺の心を掻き乱す。

「お…おかえり」
「?…ただいま。」
 ドアを開けた瞬間の明らかな違和感。玄関を開けても、あのご機嫌な顔の代わりに俺を迎えたのは困ったような声だけだった。
 マコトの方が仕事が早くに終わるだろうと、この前の帰り際に渡しておいた合鍵。先に上がっていたマコトが、俺を迎える。 最近増えたこの事態にそろそろ合鍵をくれてやらなけりゃ、と思う。 大体アイツの性格から言って「いい加減この合鍵ちょーだいよ」だの何だの言ってきそうなものなのに、 それを言わないのには何か思う所でもあるからなんだろうか。まぁ、今は最近の気掛かりより目の前の違和感か。
 靴を放る。フローリングの廊下を通ってリビングに入って、見えた背中はソファに半分以上隠されていて。 何だ?何する訳でもなくソファに座り込みやがって…。
 バツが悪そうなのを隠しもしない表情が、肩ごしにこちらへ向けられている。俺の帰宅にマコトが座ったままってのはかなり異常だ。
「おかえり。」
それはもう聞いたっつーの。
「…何だどーした腹でも」
痛いのか、と言おうと近付いてようやく気付く。気付くと同時にピキリとこめかみに筋がたつ。

 「ぅおいっ何でこいつがそこにいるんだよっ!!?」
「し〜〜っK!駄目だよ起こしちゃ。」
「あ?何言ってやがる今すぐつまみ出す。」
「いやその、ぐっすり眠ってるんだからさ、ぅああ、ほら足下げなさいよKの足なんかで踏まれたら神様影クンと見分けつかなくなっちゃう!」
小声で叫ぶという器用な芸当をこなしながら、マコトは必死に膝の上の餓鬼を守る。その態度がますます気に入らない。
 大体そこ(マコトの膝の上のことだ)は俺だって頭を乗せるまでに数々の試練を乗り越えて…っていうか1時間500円の聖域なんだぞ金払えっ!
 振り上げた足をMZDの、すぅすぅ気持ちよさげに上下する腹の真上で留め、眼下を睨みつける。
「納得いかねぇ。」
「だってすっごく疲れてるみたいでさ、いいじゃん子供なんだし。」
「外見だけだろがっ!」

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神様熱が上がりすぎて耐えられなかったこの夏。
05.07.21

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