自分の苗字を三回も連続で呼びかける奴なんて他にいない。

「ナカジナカジナカジーーーっ!!」
 後ろからの声に振り向くまでもなく、ひょろりとした男がこちらを覗き込んだ。 軽薄さの象徴である茶髪がふわつく。眼鏡の下から睨んでも反射で見えない。
「どしたのー?ガッコ早退?海行く?」
「………。」
歩道の縁石の上をひょいひょいと歩き行くサーフボードは、隣に並ぶと酷く邪魔だ。 必要以上に上下する頭部も邪魔だ、落ち着きのない手足も邪魔だ。
「………海行く?」
「…早退じゃない。」
「そーだよねぇ?ナカジ偉い子だもんね。ねえ海行こうよ。」
「…一人で行けよ。」
「いっしょ行こうよー。また浜辺でギター弾いて。」
「一人で行け。」

 カラカラ、速めた歩調に下駄が鳴る。熱くなる息に眼鏡が曇って、頬にあたる風が冷たくなる。 カランカラン、下駄が沈む熱の逃げた砂浜に、たたずむ背中がやけにムカついて脳裏から離れない。 それも振り払えと前を睨んで歩を進める。
 大物を抱えた二人が歩道で競歩しても差は開かず、信号で行き詰って息をおさえた。また、隣に並ばれる。
「………は、」
「…ねえ行こ?」

 青信号を告げる童謡のメロディを聴きながら、笑顔に手を取られ駅とは逆方向の道を行く。 ギターに触ったら殺してやるところだったのにと思った。





************************************
公式発表前タロナカ。
ナカジのあのヤケっぱちさと熱いダサさはどうにも浪人生の香りがするけど、
今回はあえて真面目高校生と年齢不詳阿呆サーファーで。

ナカジ→口下手ぽい、言葉遣い良く無さそう、キレる、時として激しい、フテる、ギターが大事。
タロ→海とサーフィンと夏が大好き、前を見て歩かない、落ち着きがない、寂しがり?
くらいしか情報が無かったのでもうかなり二人とも阿呆。

タロは何言われてもえへらえへらしてて、泣くことはあっても滅多に怒らない。
ナカジは滅多に泣かないし笑わない。その分タロが泣けばいい。
そんな勘違いなタロナカです。
05.10.13


Textに戻る