「馬鹿野郎ナカジ!!」

舌足らずが叫んでもばかにゃろうにしか聞こえんなぁ、と思いながら呑気にタロウを振り返る。

カンカンカン、ゴッ!!
あ。
と思った次の瞬間には突き倒されていて、
砂利に擦られた肌と飛んだ学帽の代わりに頭部に鈍痛、
仰向けに転がった身体には何かの重みがズシリと乗っていた。
砂煙にむせた咳が間近にケホンケホンと降って来る。
背後を凄い勢いで電車が通過し、只でさえ大きなその音も警報機の音も遮断機の中で聞くと更に耳障りなんだなと思った。


「………何、してんの、君。」
「な、何してんのはこっちの台詞だあぁ!!! 何考えてんだよお前っ、警報機鳴ってんだろ!遮断機降りてたろ!?あぶ、危ないじゃ、…………っ、……?」

ぼろぼろぼろぼろ、見開いた目から滝みたいに流れる涙に、流した本人が一番驚いたらしかった。

「………っ、あれぇ…ごめん……エヘ、えへへへ…、」
ふるふると全身を震わせて笑ってるみたいな顔してタロウが泣いた。
「……か…った、ナカジが死なないでよかったぁ…!」
その後も、よかったよかったよぅとタロウが泣きじゃくり続けるのでその手を引いて、 踏切から逃走したナカジは、これ以上ないくらい不本意な顔をしていたという。




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青い!恥ずかしい!意味判んない!
難しい!あの子が難しい!メガネの方!!

確かナカジがいじめっこにギターを踏切内に隠されて電車来てるのに取りに行こうとしたとかいう妄想からこうなったんだったと。
泣けないナカジのためにタロちゃんが泣いてくれます。ナカジは偉そうに水分補給だといってコンビニで牛乳オゴってあげます。
ギターが直るまでタロもサーフボードを封印すると誓うけど、三時間で挫折するとか。

…やっぱりどっかズレてんね私のタロナカ。



05.10.18


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