君に花を





「ユーリユーリ♪たっだいま〜3年と半年ぶりぃ!!今回はけっこう長かったけど〜ぉ元気にしてたかいこの寝腐れ野郎っ!!」
からっぽの城には足音がよく響く。
緑色の黴の臭い、天井からは露だか水漏れだかがポタリ、キノコの繁殖を促していた。

「まだ寝てんの?ねぇねぇユーリってばー。」
ガンガンと棺の蓋を乱暴に叩く。うんともすんとも言いやしない。
「ユーリ様はお寝坊さぁん……、っなんて言うと思ってんのかい!?も〜いい加減起きなよぉ。お土産も話も沢山あるヨ君が気に入るかどうかはわかんないけどヒヒヒ☆」



雪が降っても。

それが溶けても。



「………。」


君は起きない。























「今日はあったかかったから〜日溜まりに橙色のご褒美〜♪」

「寒いよ寒いよ春が来たかと思ったのにさ〜急に雪とか降って来られても困るんだよねぇ。」

「昨日の嵐で壁が崩れたみたいだけど、修理する?ヒヒヒ…ほっとこうかめんどくさいし。」

「春は〜おっ花の季節なの〜なの〜菜の花〜♪あなたに花束をぉと・ど・け・ましょ〜♪」

「散る花を惜しむまい、それは儚いからこそ美しいのだ…」

「雨雨雨今日も雨〜キノコ。」

「風が吹きます南風〜ピアノの上で洗濯物乾かしていいかい?もう古いし構わないよネ。」

「………暑い。」

「………………溶ける。」

「ぎゃあ〜雷恐いヨ〜!!お助け〜!!」

「雷って…綺麗だよネ…。」

「今日は曼殊沙華をお持ちしました。明日はキンモクセイです。…入院患者みたい。ヒッヒッヒッ!!」

「…月が綺麗だよ?」

「収穫の秋です。食べるぞ〜冬に向けて!!僕ぁ肥える!!」

「夕日が綺麗だネ…。」

「落葉拾ってキタよ。とりゃあ!!」

「い〜しや〜きイモ〜♪」

「オリオン座って変な形〜…。」

「寒いよ〜息が白いよ〜ブルブル。」

「ジングルベール♪ジングルベール♪鈴が〜…」

「あれー今日って1月1日?」

「…クソ大雪っ…録画用テープ…。凍死か…ギャンブラーか…。」

「ハッピーバレンタインvホットチョコより真っ赤な血がお好みね〜♪」

「あ、窓ガラス割れてらぁ…参ったネこりゃ☆」

「薄紅色の〜季節が来るよう♪」





棺桶カンオケ棺ヒツギ
coffin…casket?Sarge?

そんなに心地いいもんかい?
狭くて暗くて、眠くなる?



もう起きたくないくらいに?













君が目覚めるなら、花の季節がいい。

そしたら僕は棺の周りを花で埋めつくしてあげるヨ、どっかのお姫様みたいにネ。



「おい…」



そんで僕ぁ王子様を演じるのサ、目覚めのキッスをしてあげよう。



「スマイル!!」

げし。

ぎゃん、蹴るのはやめて欲しいんだよネ暴力反対〜!!

「ヒッヒッヒッ!!」
「私の棺に腰かけるとは…いい度胸だな?」
「うたた寝してたー。」

ユーリ城の地下にある、棺のある隠し部屋。ここは薄暗くて肌寒い。
僕達は、そんなこともとっくに忘れてた。毎日忙しいからネ。

「……。」
「君が寝てた200年を、ダイジェストでお送りしてましたー。」
「は?」
「ヒッヒッヒッ…そういえばファンの皆から花束が届いてたヨ。」
「…ああ、さっき受け取った。…アッシュが…」
「ん?アッシュ君がなーに?」
「いや…お前を探していたぞ。」
「はいはーい☆」

振った袖からヒラヒラと、花びらがいくつか落ちていく。
散る花を惜しんだのはどれくらい前の春だったかな。

「スマイル、」
「ん?」
「お前は忘れたかも知れないが、ここには何も無いから、もう立ち入るな…そう言っただろう。」
「そうだっけ?」
「こんな寒い所でうたた寝して、風邪などひかれても困るしな。」
「アイアイサー!!ヒッヒッヒッ☆」
僕は言われた通りに階段をあがってアッシュ君を探しに行く。

地下にひっそりと置かれた棺。
散らばった花びら。踏むとすっかり乾燥していてカサリという音をたてた。

…目を覚ましてからもうそんなに時間が経つんだねぇ。

振り返ると、ユーリは棺を愛しそうに眺めてるところだった。

「先に行くよー。」
「ああ…」







散る花を惜しむまい。彼が悲しむところを見るのは辛いから。

だからいつでも

君に花を。







********************************
うちはアシュユリサイトのはずですが…?
前回の本「PLAY WITH MY DOG」でもちょこっと触れましたが、ユーリ城の地下にはそんな部屋があるみたいですよ。
次の本でメインになる予定の部屋ですことよ。

春にアップすりゃあ良かったかなー、この話…。サイト開設直前に書いて、眠っていた…。
スマイル、大概痛い子です。
でも気に入ってます、花とスマイル。


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