KKの肌は割と白い。マコトは自分の色黒な腕と、KKの上気して赤くなった頬を交互に見つめた。 こうして見ると色っぽいもんだよなぁ…。室内職の癖に自分は地黒なので、KKと比べて肌の色が薄かった試しが無い。 KKは健康的でいいじゃねえかと言うが、夏場などは必要以上に軟派に見られて困ったりするのだ。
 肌の色だけじゃない。肩幅も、筋肉の付き方も全然違う。 本当に色っぽいんだよなぁと、汗ばんだ肌を観察して眩暈がする程うっとりした。 熱さの所為で頭がうまく働かないばかりか、身体までフラフラふらふら、思ってもいない方向へ揺らぐ。 ぼんやりとした明るさを保っている室内で、相手の体温をも感じ取ってしまいそうでマコトは気持ち程度、隙間を作った。

「こーら、逃げんなヨ。」
「うっさい、逃げてなんかない。」
「フフン、」
 その余裕も何時までもつんでしょうね、笑うKKの瞳も何処か焦点の合わぬままだ。
 マコトは鬱陶しそうに首筋の髪をかき上げるが、汗で張り付いてうまくいかなかった。 末端の神経はとっくに痺れていて、見かねたKKがマコトの髪を優しくかき上げる。 触れた指先の熱さ。辛うじてその手を捕らえると、熱のこもった腕の向こうに顎のラインを伝い落ちる汗の雫が見えた。 屈折率の歪んだ酷くかすむ視界の中では、それすらも思考をかき乱しているようで、マコトは目を閉じた。雫はぽたりと落ちて直ぐに蒸発した。 血液は、まるで沸騰しているようで。肺は熱気で満たされて焼かれてゆく。

「……あのね、KK?」
「なんだ。」
「今なら、泣いてもわかんないかもね。」
「そーだな。泣きたい用事でもあったのか?」
「んーん、何となく思っただけ。」
「そーか。」
「あの、さ…。」
「なんだ。」
「…ぅー…あーー……。」
「辞世の句でも読む?」
「あ、俺…も、もう駄目だ…。」
「つれねえなぁ。」
「もう無理…。や、ひっぱんなよ馬鹿…。」

腕を絡められ、逃げを打つ身体を引き止められ。

「もういーのか。」
「うぅ…。」

まとわりつくような視線も、何もかも振り切って。

「俺の勝ちだな。」
「もー限界だーーーっ!!!」

マコトは「サウナ室」と書かれた扉を開け放ち、水風呂へ飛び込んで行った。




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お蔵に入れても良かったのですが…裏日記救済。
親父臭さ満点。お約束お約束!わーい!

050514



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