「高校2年生なんて、人生で一番ハイテンションな時期だと思うよ。」
 だから何でも吸収するといい。彼はそう言った。
「サトウさんは、仕事楽しい?」
「うーん…僕に、出来ることは少ないから…。リュータ君は何がしたい?」
「……どーなんだろ。」

 あんまり口を出すべきじゃあないんだろうけど、と前置きをして語りかけられる言葉は、進路指導主任の言葉より、素直に聞き取れた。
「今は、何してる時が、楽しいのかな。」
「バイトかなー。」
「丼物屋さん……。料理得意だっけ。」
「んーん。厨房にいるより客の世話してる方が好きー。」
「接客業か。リュータ君人懐こいもんね。他に興味あるのは?」
「…ししゃも。」
「え?」

 名前を呼ぶと彼の膝の上からこちらへやって来る、クリーム色の毛玉。
ぬくい。確かに命の重さを感じる小動物。
暫くゴロゴロ一緒に転がった。フローリングの床は固かった。
「どっちが猫だか判らないね。」
 クスクス笑う心地よい声が優しすぎて、思わず目を閉じた。
「…動物触るのが好き。こいつら面白れえよ。先週学校の裏にさー犬が迷いこんできてさ、サイバーが手ぇ出したら噛まれそうになったのに、俺ん時は抵抗しなかったんだぜ。ちょっと感動したな。」
「…学校、楽しいかい?」
ニコニコと、まるで自分のことのように。

「おー。…勉強大変だけどなー。」
「数学、苦手なんだよね。」
「数式見てると頭痛くなるよ〜。勘弁しろって感じ。」
「僕も苦手だったなぁ…。得意科目は?」
「体育っ!!…と、英語?」
「うんうん。それと?」
「え?あー…家庭科…音楽…政経…理科は、地学が面白いよ。サトーさんは?何が得意だった?」
 僕のことはいいからと、困ったような笑顔は語っていたけれど。
「…古典、かな。現代国語と世界史も。英語は、成績良くなかったけど、結構好きだったなぁ。」

 ふと訪れる沈黙に、腕の中で大人しくしていたししゃもがニャアと鳴く。

「…君は何が好きなのかな。」
 答えが求められていないことはわかっていたけれど。

「……………サトウさん。」

 白紙の進路調査票に乗っかった、自分の未来は透明で、とてもとても、目を凝らしても一向に見えてこない気がした。
 無表情を装っても微妙に顔が赤くなって、俯いてしまう彼の未来に、自分がいることを願った。

 再びししゃもが鳴く。お腹が減ったみたいだ。
「…ししゃも、嫉妬しているみたいだね。」
「あはは、ししゃも〜お前のことも好きだぞ〜!!」

 泣きそうな顔で笑う彼は、泣けてきそうなくらい優しかった。
 この紙、捨ててしまえたら良いのにと、少しだけ思った。




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サトリュですがリュサトです。難しいなこのカプのニュアンス。
高校二年生って…こんなに幼くありませんよね…(汗。
英語が得意なのは、担当がDTOだからですよ!!
創作の秋に、書き散らかす感じで。ジャンクジャンク。

041014


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