タトエバハカレルモノナラバ



例えば愛が測れるものならば、その尺度は贈り物の値段だろうか?
それとも「好き」と伝えた回数?
1日の内で彼について考えた時間?

だとしたら。



 俺は、Kにプレゼントするなら安い給料で、できるかぎり考えて確実に喜ばせる物を贈っているけど、そのお値段と言えば、自分に贈られる追っかけの娘達にも敵わないことがあったりして。
 会う度「好き」と言っていないこともないんだけど、同じ位「馬鹿」とか「ヒゲ」とか言いたい放題だし。大体意地張って意見食い違って喧嘩なんてしょっちゅうだし。
 仕事だってあるし、家族だって友達だっているし、四六時中Kのことを考えていられる程暇でもなくて。

 じゃあ一体、俺の、君が好きだよ絶対誰にも負けやしない、って気持ちの根拠は何処にあるんだろう。
ありのままの俺を好きになって欲しいから、喧嘩しても自分の気持ちには正直だし、所詮違う人間なんだから判り合えないんだとか、悟ってみたって諦めきれないし好きなもんは好きで。





「………おい。」
「………何。」
「眉間に皺。」
「………こういう顔なの。」
「かわいくねーゾ。」
「………。」
「美人が台無し。」

 Kの家のフローリングの床はいつも必要以上に冷たい。その冷たさに足をぺったりとくっつけて、俺は今、ふてくされながら思考の小路をひたすら走っている。






 聞いてないし。今日の仕事の依頼人はメイさんだったなんて。
 ベルちゃんの愛猫捜索依頼の時はまだ良かったんだ。不遠慮を承知で介入して首突っ込んで、ご丁寧にターゲット捕捉の際に引っ掻かれたという傷に、絆創膏まで貼ってやることができたから。
 でもメイさんは、プロで大人で、こっちの事情も知っているし、まぁだから俺達の仲をからかっているだけなんだろうけど、それでも。  俺が居慣れてしまったKの家の前で、わざわざ2人、全く手を伸ばせない世界を作って、これみよがしに耳打ちなんてされている現場に遭遇したら。
 ある感情が湧き上がるのを抑えられなかったのは、俺の修業不足のせいなのか?ねえねえ。





「K。」
「何でしょ。」
「アンタって美人に弱いね。」
「………かあいいな、お前。」

 つまらない嫉妬をするなという意味の台詞を飛び越して目の前の俺の感想を述べたKの脛に、とりあえず蹴りを繰り出しておく。

「痛って…。」
「バカ。」
 素直な気持ちを伝える気には到底なれなかったので(何故ってとても恥ずかしいからだ)、俺はまたその気持ちの代わりになる適当な言葉をぶつけた。

「馬鹿で結構。…おい。」
「今度は何。」
「あまりの可愛さにくらりときた。」
「…調子に乗るな。」
「もう降りられマセン。」
「メイさん、良い香水使ってんな。」
「………………シャワー浴びてくら…。」
 降参ポーズを決めてすごすごと去って行く背中を見ながら、もうひとつ「バカ」と呟いて湧き上がるこの感情を、抑えられないのも、修行が足りないんだなぁ、と思う。



君が好きだよ。
…どれ位?
絶対誰にも負けやしない位。




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マコトにも恥ずかしいなんていう感情があったのですね…。
日常的にすぐ小さな嫉妬をしまくるのはマコトで、
溜まりに溜まって手が負えなくなる位嫉妬するのはKKだと思う今日この頃。
課題もやらずに何を書いているのやら…。

040901


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