幸せな夢を見た。 そこにはナカジとリュータとサイバーと、ハヤトとニッキーと、マコトさんとパルとKKさんと、 サトウさんとししゃもとはなちゃんとさゆりちゃんと、DTOもハジメ先生もユンタも六さんも、 カジカとかデイウ゛とか他にもたくさんたくさん把握しきれない程の友達がいて、 俺の両手はいつの間にかあったかいマフラーと手袋とコートで塞がってしまっているのに、右手に持った紙袋に気付くんだ。 随分おしゃれな筆記体で書かれたお店のロゴマークと持ち手の部分だけが白くてあとは綺麗な赤、 金と緑のリボンが変な形で結びつけられていた。 何だろうと思ってその紙袋を持ち上げようとしたら、三角帽をかぶった神様が現れて言うんだ。 「Merry X'mas タロー!」 そこで目が覚めた。 リンリンリン、と鳴っていたのはジングルベルじゃなくて目覚まし時計で、何だ夢かと手を伸ばして止めた。 パジャマを脱いで顔を洗って、Tシャツに着替える。 勿論枕元にプレゼントなんて無くて何年か前にいなくなってしまったサンタクロースを、俺はちょっとだけ残念に思う。やっぱり寂しい。 家を出る頃には窓の外はとても冷たくなっていて、マフラーも手袋も帽子も無いというだけで何とも自分は辛そうに見えた。 先日お気に入りのマリンショップで買った今日唯一の荷物だけが俺を元気づける。 神様の言う通り自分の得意分野から選んでしまったのだけど大丈夫だったろうか。 少しうつむき気味に歩いていた歩道橋の上で、駅へと続く道を見下ろせば、 見慣れた青い長いマフラーの背が足音高らかに(流石にここからは聞こえないけどそんな歩き方だった)歩を進め、 あ、あ、と思って俺が歩道橋を駆け降りた今まさに、切符売り場から改札へと移動していくところだった。 「ナカジ、ナカジっ、ナーカージー!」 鍛えた腹筋で呼び声をあげ全速力ダッシュで彼の元へ向かうと、自動改札へ切符を入れようとしていた手が、止まる。 ちらっとこちらを見たような見ないような振り向き具合で人混みからはぐれると、学帽のツバに手をやって少しずり下げる。 ずれてもいないメガネをあげる仕草をする頃には、息を白く弾ませて俺は到着する。そんなに待たせなかっただろ、何せ俺だし!? 「ナカジーぃ、メリークリスマース!」 駆け寄った勢いのまま飛びつこうとしたらズサッと音がする程激しく避けられて、 地面にくっついた俺を後目にナカジは改札へ向かってしまった。慌ててパスネットで後を追う。 「わ〜ん待ってよナカジ、…あっれー今日予備校は?遅れてくるんじゃなかったの?サボり?余裕?」 「…ぅうるっせぇえ黙れ指定校推薦野郎ぅおおぉおおお!!!」 「わぁナカジ、お、落ち着いて!ごめ、ごめんなさい!痛い痛いごめんなさい!」 禁句を言ってしまった俺にナカジが襲いかかってきたので早足で逃げる。 師走の混雑したホームはすぐにギターケースを人波に呑みこんでしまう。そうでなくても波乗りなら俺に分があるんだし。 「…午前に振り替えただけだ。」 「あ、そうなんだ?リュータも遅れるって言ってたけどどーかなー、」 バイトや勉強で忙しくて皆、最近ちっとも遊んでくれない。しかも今年のクリスマスは週末だから、学校も無くて会うこともできない。 でも無理かもって言ってた奴も、なんだかんだで予定合わせて来るかもしれない。このナカジみたいに。 楽しみだねぇ、と二日ぶりの彼を振り返る。休日のホームで電車を待っている学ラン姿のナカジは、かなり浮いていた。 ふと、肩にかけられたギターケースに隠れるようにして、ナカジの左手にぶら下がっている紙の袋に目がいった。 随分おしゃれな筆記体で書かれたお店のロゴマークと持ち手の部分だけが白くて、あとは綺麗な赤の。 金と緑のリボンが変な形で結びつけられている、この紙袋はまさに。 「……俺、今日ナカジのプレゼント欲しいなぁ。当たるんなら、ナカジのがいい。」 「…参加者何人いると思ってんだ阿呆かお前。」 「エヘヘへへぇ、ナカジ、それ、プレゼント交換用のでしょ。中身、何? 買ってから一度開けたでしょう、家で。リボン明らかに変な形になってるし。楽しみすぎて我慢できなかった?」 「…………!」 「エヘヘうふふふふ。何かワクワクするなぁ!」 「きっしょいんじゃボケ!!」」 容赦も無い蹴りが飛んできて俺のケツにヒットした。 危うく電車が滑り込んで来た線路に転がり落ちるところだったけど、聖なる日にナカジを殺人者にする訳にはいかないので、 そこは華麗にバランスをとって堪えた。何せ俺だし。 そんで俺達は、笑いながら電車に乗った。 きっときっと、今日はあの今朝の幸せな夢なんて軽く越えるくらいの幸せが、俺を待っている。 ****************** ハイ!タロナカでした!(明らかに時間切れ)師走って忙しくて嫌になっちゃうね…。 ああ…何か勝手にタロを指定校推薦にしてしまいましたが…ええと、今回のこの2匹は高3ってことで(適当)。 世の中の受験生の皆様頑張って下さい! タローに公式のNET対戦台詞「俺だし」を言わせるという影のお題はクリアできたのでよしとします…。 05.12.21 Textに戻る Topに戻る |