「…って感じで、何か変だったんスよスマイルが。」
何故シャツが1枚だけ乾いて居ないのかという話から、今日の出来事をほぼ聞き出されてしまい、狼男はお茶を一口飲んだ。
 「そうか…お前、私の留守中城には来なかったのか。」
独り言のようにユーリが言う。
 それであれか。ユーリは先程の、会話にもならない言葉群を思い出す。

 うつ向いたアッシュは、前髪に隠れた目線だけユーリに向ける。
「ユーリが出発した翌日と、4日前に1度来たッスけど…だってスマイルも出掛たみたいだったし…その…多分。」
 ユーリは思ったより馬鹿ではない狼男を見やる。 こいつは聡いと言うよりも本能が、強い。話相手として不足は無いのだが時間がかかる。

 「それで?」
「…え?」
「多分?」
「あ…多分…居なかった、と思うんですけど…もしかして…。」
 自信は無いらしいが上出来だろう。秘かに感心しながらユーリは頷いた。
 ギターと鞄はあらかじめ隠しておけば済むことだ。 あいつの気まぐれはいつものことだし。意味の、無さそうなよくわからない行動も。 だから、何も変わらないから、お前が気に病むことはないよ。




 「ところでユーリ?俺さっき、おかえりって言ったんスけど…?」
「は?馬鹿か貴様、何故城主がいちいち帰宅を知らせねばならんのだ。」
「うー…。」
犬に躾けされてなるものか。吸血鬼は舌を出した。

 もったいないから、特別だから、お前に言ってはやらない。
 「ただいま」なんて。





 「結局、奴はどうしてるんだ?」
「はぁ…腹一杯になったら眠くなったってんで、もう部屋に…夕方ちょっと寝たはずなんスけどね、」
人の膝にヨダレたらして。狼男は言う。
「ふ…随分と仲良くなったものだな。」
「ズボン、おろしたてだったッス…。」
食後の紅茶を飲みながら、吸血鬼は楽しそうに笑った。

 「そろそろお前もここを根城にしたらどうだ?毎日道化の相手は大変だが、楽しいこともある。それに…」
根城って、そのままじゃないスか…。と、思うも今は突っ込むべき時ではないと承知していたので流した。
「その方が何かと便利だしな。私としても。」
ユーリは意地悪そうに微笑んで席を立つ。
「……へ?」
突然の申し出に、アッシュの耳が跳ねた。

 その言葉が、自分にとって喜ばしいのか何なのか、わからずにアッシュは口をぽかんと開けたまま。

 ユーリの微笑みは崩れぬままに。その言葉を、
「…今日の夕食は最高だった。この一週間、お前の作るものが食べたかったよ、これからも。」
理解したとたん赤く染まる褐色。

「良ければ城の台所をお前にやろう。好きに使ってくれて構わない。部屋は、いつもの所で良いだろう?」
「あ、は、はいッス!!!頑張るッス、俺!!」

これからは毎日三人で。





 「さて、私も寝るか。」
夜はこれからだというのに珍しい。長旅明けの城主はダイニングを出る。 そこへいまいち頭の回転の鈍い、犬を置いたまま。
 ますます混乱させる言葉を残して。

「…スマイルの部屋で。」























「…へ?」



あっはっは、と高らかな笑い声に、ヒッヒッヒッが混じっていた。






結局三人、慣れない添い寝に、

スマイルがどれだけ安心して、寝相の悪さを爆発させたとか。
決意新たにアッシュが眠れぬ夜を過ごしたとか。
二人が、ユーリはどんな状況でも熟睡できると知ったとか。

それはまた、今日の長い夜の話。









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スマイルが泣く話っつーか、deuilそれぞれの人間模様?みたいな?
またの名を、ユーリさん、アッシュにプロポーズ。

スマ、弱い子過ぎかも…。
ユーリとスマイルの出会いはどっかの公園で、スマが弾き語りしてた時であって、
この話だとユーリがスマに化粧とか包帯とか、教えてあげたみたいだけど、
その時にはもう姿見えてたんじゃないのかい!!?

オフィシャル設定はできれば無視したくない…ポプンは設定資料情報少ないから…。

それにしても、妖怪のくせになんでこんなに可愛いんだ。



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