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「思いを強く込めると物にも魂が宿るって言うよねぇ。元からここって、「そーゆーとこ」だしサ。宿っちゃったわけね、タマシイ。」 キッチンを追い出された(というか暫く入れない)二人は隣りの部屋を気にしつつ食堂で肩を並べる。 綺麗に磨かれた白い陶器のティーカップが、ユーリの唇を受け止めて、花の香りのするお茶を入れて大人しくしていた。 「元は私の城だというのに…まったく攻撃してくるなど…ありえん。不愉快だ。」 「ユーリ全然料理しないから、アッシュクンが来るまで荒れ放題だったじゃない。今だってつまみ食い以外でキッチンに入んないデショー。」 「価値ある食器には気をつけていたぞ!…まぁ、200年も放置していたのは確かだが。 貴様も同じようなもんだろ。カレーはこぼす、フィギュア彩色用のパレットに皿を使う、つまみ食いはし放題。」 「ヒッヒ、そうだけど〜。ユーリは特別嫌われてるみたいだからサ〜。」 「…………面白くない。」 「ヒッヒッヒッヒ!アッシュ君は本当モテモテだね〜☆キッチンから出てきたらたっぷり可愛がってやろうゼ〜♪」 「ぎゃあああ!ユーリ!スマイルー!食器が勝手に食器棚に戻ったッス〜!」 ユーリ城にはしばらく、キッチンの魔物たちの勝手な心遣いに慣れない家政婦犬の悲鳴が響くことになる。 便利でいいジャン、とスマイルが笑うが、ユーリは眉間に深く深く皺を刻みこんだ。 自分以外の何者かが、それが何者であろうと、他に奴を好きであるらしいこと、しかも相思相愛であるらしいという状況は、さぞかし悔しいだろう。 そんな時、キッチンでは決まって調理器具や調味料が、鈍く柔らかく密やかに、満足そうにきらめくのだ。 ![]() ![]() ![]() みんな犬が大好きだ、という話。 すっっっごく昔に書いて、放置してあった文章。目も当てられなかったけど、修正して地球に優しいリサイクル。 まだ多分アッシュが城に来たての頃…。何か最初の頃書いた奴の方が糖度高いね…。 調子に乗ってキッチン用品を並べすぎました…楽しかった…! 03.10.31 に書いて、 05.09.09 に加筆修正完成。 <<BACK |