空気を、吸い込む。
嗅ぎ慣れた匂い。
俯いていた目線をあげる。
見慣れた城。
がらごろと、スーツケースを片手に引き連れて。
門をくぐった。
玄関へと続く石の道に、スーツケースの転がる音がよく響く。
ぎぎ…ぃ…!!
古くて重い木の扉。手に馴染んでいたはずのその感触も、久しぶりで。
ホールに足を踏み入れた頃には緩む頬を、押さえられなくなっていた。
「ただいまッスー!!!ユーリ!!!」
帰ってきたのだ。
彼の人の居るここへ。
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