正月休みは2人共30日から3日まで。
マコトの家族は今年は元旦から両親の実家へ。

師走、今年は阿呆らしいくらいに本格的な寝正月にしようとKKが言った。
何にもしないで何処にも出かけないで、まあ初詣くらいはしてもいいけど、2人でゴロゴロしていよう。
そのたっての希望を、ああ、そういうの夢みたいだよな、とマコトは二つ返事で了解した。

そんな訳で、クリスマス返上で働いて29日の夜には、 マコトは近所のスーパーで安売りだから買っておいてくれと頼まれた箱ティッシュと、 ネギとお餅とその他母親に押し付けられた食材やらミカンやらを持って、KKの家の前に立っていた。

「KK〜?いないの?Kってば〜。」
どんどんどん、古いドアは鈍い音をたてる。
「くっそ〜寒ぃ…。」
合鍵を借りておけば良かった。
まさか自分の方が早くなるとは思わなかったから。だってもう9時半だ。

ズルズルと背にしたドアをつたってしゃがみこむ。
ガサガサと音をたてるスーパーの袋を横に置いて膝を抱えた。







「悪ぃマコト!!待ったか!?」

いつもは軽快で猫のように音をたてないKKが、カンカンカンと足音高らかに階段を登ってくる。
「ううん今着いたとこ。」
「悪いっ」

ぎゅぅっ。
走って来た勢いを殺さずにマコトを抱きしめて、片手で鍵を探る。
「あ〜も、マジ悪ぃ、いきなり残業押し付けられてよあんのジジイ…!!」
その代わりこれから5日間は何が起きても仕事しねぇって念を押してきたと、KKは舌を出す。白い息が嬉しそうに弾んでいた。

ガチャ。
マコトを抱きしめたままドアを開ける。

「…お待たせいたしました。」
格好つけてお辞儀しても、招き寄せた手に握られているのはネギがはみ出たスーパーのビニール袋だったりして。

とにかくふたりきりの、何もしない、思いっきりゆっくりする準備は整った。
次にこの扉を通るのは帰る時だろうなぁ、夢みたいだなぁ、等と思いながら、マコトは寝正月への扉をくぐった。






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