…………朝か?

瞼をさす光に目が覚めた。カーテンが薄っすらと開いている。
目覚めは良いほうではないが、ここのところの寝不足はこの休日ですっかり解消した。
もっともその代わり腰痛に悩まされているのだが。

ごろん。
寝返りをうつと、傷のある肩が間近に見えた。
すぅすぅと、微かに息づく背中。いつもはあまり見ることの出来ない背中。
けどそこにも銃創だかの傷が沢山あることを、マコトは知っていた。

静かに寝顔を覗き込む。
気配に敏感な性質の恋人を持つと、ゆっくり寝顔を楽しむことも、稀だ。
穏やかそのものの寝顔を見て、薄く笑うと、マコトはふと外のことを思った。

大晦日の半日をたっぷり使って積もった雪は、もう溶けただろうか。
雪が全ての音を吸い込んでしまったかのように外からは何も聞こえない。
世界が凍えてしまったようだ。

もそもそ。
適当に腕を伸ばして衣服を手探りで引き寄せる。
冷気を入れないように注意して、そろりと足をベッドから降ろす。
つかんだジーンズをルーズに穿いて、手に触れたパジャマの上着を羽織ると、立ち上がった。

…静かな動作に静止をかけたのも又、音のしない世界でのことだった。

ふわ、と羽織っただけの上着が落ちた。
くんっ、とジーンズの後ろのベルト通しにも指が掛かる。

どん、マコトは引かれるままにベッドに尻餅をついた。

無言のまま暫く見つめあう。
ここでロマンチックな展開になれないのが自分達だよなぁ、と思いながらマコトはKKの台詞を待った。
通常でも細くなっていることの多い瞳は、やはり眩しそうに細められていた。

KKは何も言わない。

仕方なくマコトが口を開く。
Kに聞き取れるだけの小さな声で。
静寂を、なるべく壊してはいけない気がしたから。

「…………おはよう?」
「…………。」
もそ、と口まで毛布に埋もりながら、Kが何か言ったようだが聞き取れない。
「ん?」
「…………。」
「シャワー浴びようと思ったんだけど。」
「…………。」
「何?聞こえないよ。」

くいくい、指が呼ぶ口元に耳を近づけると、







「………行くな。」



大きな餓鬼に抱き込まれてそのまま。
凍えた世界の止まった時間の中で。
まだここにいて欲しい?

寝惚けたのかこの連休の仕様なのか、気持ち悪いほどに素直なKKに戸惑いながらも、マコトは安堵して体を預けた。
ああ、まだちゃんと、俺が動く以外の音がしている。

まだ、生きている。ちゃんと生きている。
まだ、世界は動いている。ちゃんと動いてる。















タ…タイムアップ…!!無念だ…!!
「あんど」と打つと「安堵」の前に「&」出てくるウチのパソコン。


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