「こっちッス!」
 道も無いような森の中を、スルスルと少年は進んでいく。 花の在り処までの案内を頼んだユーリは、少年のペースに釣られること無く、落ち着いてついて行った。

「お兄さんは、ヴァンパイアなんスか?」
少年は振り返って立ち止まる。
「そうだ。」
はーっ、と感嘆の溜息が漏れた。 格好良いッス……、少年はなおもユーリを見上げて頬を染める。 悪い気はしない。少年も楽しそうに、追いついたユーリの前を再び駆けて行く。

「どこに住んでいるんス?」
「城だ。」
「わー格好良いッスね!」
「お前は、どんな暮らしなのだ?家族は?」
「えーっと、俺はね、父ちゃんと母ちゃんと兄ちゃんと姉ちゃんとちっちゃい弟がいるッス。 森の奥にある一軒屋で暮らしてるッス!」
「ほう…狼男というのは、一人で暮らしている者が多いと聞いていたが。」
「兄ちゃんと姉ちゃんは、今は一人で暮らしてるッス。」
「そうか。」
「お兄さんも、一人暮らし?」
「ああ。……いや、居候がいるな、今は、2人。」
「へえー!じゃあ、寂しくないッスね!」
「なんだ、お前は兄と姉が居なくなって寂しいのか?」
「ち、違うッス!だって今は、母ちゃんおとーとの面倒見るので忙しくって、俺は、ちゃんと手伝ってるんス!だから、」
「クックックッ……」
「あー!笑っちゃ駄目ッス!」

 会話は和やかに続き、しばらく追いつ追われつ歩いて行った。



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