「眠ったまま目を覚まさないという恐怖がどれ程のものか、分かって頂けました?」 そう言って笑う。 6 ガサリ、と藪の茂みをかきわけたら、包帯姿の透明人間が居た。 「なぁ〜んだ、一緒になっちゃったネェ。」 吸血鬼は顔をしかめた。 「ちょっと、眉間の皺可愛くなさすぎイヒヒヒヒヒヒ。僕だってビックリしてるんだヨ。 君、もっと前を歩いてるんだと思ってたのに。」 どうしたの?スマイルは笑いながら尋ねた。 「……迷子の子供の相手をしていて遅くなった。」 「ふぅ〜ん?」 「勝負は無効だ。」 「えー?もう一回別方向に歩いてったら?」 「面倒くさい。」 「じゃあ一緒に行こう。」 2人は連れ立って歩いた。並んで歩くのは久しぶりの気がした。 「同じ花を探しているというのに、毎年毎年……。」 不機嫌な面で吸血鬼は口の中で文句を言う。 いつも勝負を仕掛ける透明人間は、隣でクスクス笑った。 「知ってる?あの花、色んないわくがあるんだってネ。毎年のことだから僕調べちゃった。」 「ああ、なかなかに興味深いエピソードが多いな。ところで、お前アッシュにはちゃんと伝えたのだろうな。」 1時間ほど前に「ハンディキャップをあげるヨ」と、 前回の勝者がアッシュへの伝言役を申し出た時の腹立たしさを思い出しながら、ユーリは尋ねた。 まあ、ユーリも入口の所で帰って来たアッシュを見かけたから、大したハンデにはならなかったのだが。 いつもの散歩より大分長い距離を歩いて、これでおやつが用意されていないなどと言われたら、 ただでさえ短いユーリの堪忍袋の尾は、絶対に切れる。 「ヒントは言ったよぉ〜?あとはアッシュ君の運次第。ってか僕らより探しやすいデショ、きっと。」 「奴の方が先に着いていたらどうする。」 「ウ〜ン、ちょっと危ないかなぁ?」 「…………あの花の、下で、」 吸血鬼は、急に先ほどの子供のことを思い出して、立ち止まった。透明人間は不思議に思って振り返る。 「眠ると、……どうなる?」 確認するように聞かれてスマイルは答えた。 「お花に魂を奪われちゃう?」 |